診療部長 石橋和樹

 飯南病院医師の石橋和樹です。近年、医療現場の問題点として取り上げられることが多くなってきている「ポリファーマシー」という言葉。皆さんは聞いたことがありますか? 「ポリ」=多い・複数、「ファーマシー」=薬・調剤の意味で、薬をたくさん飲むことで起こるトラブルのことをいいます。
 5種類以上の薬を飲んでいる人は転倒の危険性が高まる、また6種類以上服薬している人は副作用の危険性が2倍以上になるといった研究報告などがあり、特に高齢の人でトラブルが起こりやすくなります。

  • 80代女性Aさんの場合
     最近ぼーっとして物忘れが多くなり、転びやすくなったとのことで病院を受診。頭の検査などは問題ありませんでしたが、飲み薬を確認すると、5種類もの睡眠剤を飲んでおられ、薬の影響だと判明しました。もともと不眠症で、薬の効きが悪いからといって、あちこちの病院で睡眠薬を出してもらっていました。
  • 80代男性Bさんの場合
     70才の時に心筋梗塞で総合病院に入院。退院後、元のかかりつけ医だと心配で総合病院ですべて診てもらうようにしました。心筋梗塞以外にも複数の持病をかかえていたBさんは、総合病院で合計6つの専門診療科に通院することに。専門の先生はしっかり診てくれますが年々薬が増えていき、合計20種類を超えてしまいました。

 高齢になると複数の持病を抱え、薬も増えやすくなります。薬が多いことが必ずしも悪いわけではありませんが、薬ばかりにお金をかけたくはないですよね。必要以上に薬が増えないように、かかりつけ医・薬局を持つこと、病院受診のときは「お薬手帳」を持参することが大切。お薬と上手に付き合うために、かかりつけ医・薬局・お薬手帳を上手に使ってみてください。