医員 吉村美咲

 今回は「けんしん」のことをお話しようと思います。皆さんは「健診」と「検診」の違いはご存知ですか。

 健診は「健康診断」の略で、健康かどうかを調べて、病気になる前に健康状態を評価し、病気の発生を未然に防ぐことが目的です。血圧が高くないか、肥満ではないか、血糖やコレステロール値は大丈夫か、などと生活習慣を見直していきます。健診には40~74歳が対象の特定健診や、75歳以上が対象の後期高齢者健康診査、職場の健診などがあります。

 一方、検診はがん検診のように特定の病気を早期に発見することが目的です。一生のうちで「二人に一人ががんになる」と言われています。国が推奨するがん検診は、胃がん、大腸がん、肺がん、子宮がん、乳がんがあります。いずれも早期発見が大切で、症状が出てからでは遅いです。がんも早期で見つかるのと、進行してから見つかるのとでは治療が異なります。症状がないからといって油断をせずに、定期的にがん検診を受けることをおすすめします。

 「病院にかかっているから『健診』は受けなくて大丈夫」という人は、生活習慣を見直すためにも受けるようにしましょう。また「『健診』を受けているから、病院にかかっているからと『検診』を受けなくていい」という人もいるかもしれません。でも、健診や普段の通院で見ている病気と、「がん検診」で見つける病気は異なります。
 普段の診療ですべてのがんを見つけることは困難です。「病院で定期的に見てもらっているから大丈夫」と安心せず、がん検診も受けるようにしましょう。

 コロナ禍で、健診や検診、受診を控えている人が増え、病気の早期発見や診断の遅れが懸念されています。米国のデータでは、最初に新型コロナウイルス感染症が大流行した3~4月にがんの診断数が減り、乳がんや大腸がんでは診断数が半分近くに低下したとされています。がんの発生は体内で常に起こっていることなので「減少数=見つからずに放置された数」ということになります。

 コロナ禍で大変な時期ではありますが、健康を守るためにも健診や検診をしっかり受け、異常を指摘されれば病院へご相談ください。