副院長 三上隆浩

 うっかり口にした言葉が思いがけない禍を招くことがあります。不用意にものを口にしてはならないことの戒めに「口は災い(禍)のもと」ということわざがあります。松江市殿町の「大都会」で少年時代を過ごした、おしゃべり好きの私は今まで、この言葉を反省の度に何度もかみしめてきました(笑)

 さて、その「お口」は「食べる」「息をする」「話す」「笑う」など、生命の維持や人間らしい暮らしや表情をつくる器官として大切な役割を担っています。日頃の歯科治療では「歯」に目がいきがちですが、舌・顎・頬・喉も含めた「お口」全体の治療に取り組んでいます。

 かむ力を維持していると、栄養の吸収が良くなるだけでなく、脳が活性化されたり、体力が高まったりすると言われています。からだに活力があふれ気持ちが元気になると、生活に積極性が出たり、表情も豊かになります。

 前回のコラムでも紹介しましたが、最近では「口腔と全身の関係」について多くの知見が得られてきています。特に高齢者の方は、年をとるにつれて心身の機能が徐々に低下し、虚弱に傾きながら自立度低下を経て要介護状態に陥っていきます。この徐々に進行する「虚弱」のことを「フレイル」と呼んでいます。健康長寿(フレイル予防)のための柱は、「栄養(食・口腔機能)・身体活動(運動など)・社会参加」の3つに集約できます。

 「しっかり噛んで、しっかり食べ、しっかり運動もやり、そして社会性を高くみんなとワイワイ活動する」ことを日々の暮らしの中で心がけましょう。
 そんなことが一度にできてしまう「おいしい話」があります。歩いて受診し(運動)、定期的な歯科受診でお口の健康を守り、長い待ち時間をおしゃべりしながら楽しく過ごせば良いのです。いつも病院を受診される患者さんの姿がたまに見えないと、「病気をされたんじゃないか!?」と心配する今日この頃です。