診療部長 石橋和樹

 「急変したとき、人工呼吸器を使いますか? 心臓マッサージしますか?」「口から食べられなくなったとき、胃ろうをしますか?」
 あなたが病気で入院し自分で意思決定できない場合、病院では患者本人にとってより良い選択ができるように、このような質問を、家族や身近な人に投げかけることがあります。治療の選択によっては、家族や身近な人が困ることも。

 医療の進歩で、人生を長く過ごせるようになった一方で、治療期間自体も長くなり、患者本人が望まない治療が選択されることも多くなっています。
 「もしも」のときにあなたの身近な人が戸惑わないためにどのように備えれば良いでしょうか。元気なうちにできることとして2点挙げられます。

  1. もしものときに自分の代わりに意思決定をしてもらう人をあらかじめ決めておく
  2. その人と自分の価値観について話し合う

 代わりに意思決定をしてもらう人は身近な家族の人の方が良いですが、家族がいない人は親戚の人や友人でも構いません。その人に自分が病気になった後の意思決定をお願いすること、また治療方針を選択してもらう際に参考になるように、自分が大切にしていることや自分がして欲しいこと、して欲しくないことを伝えておくことが重要です。もちろん事前指示書といった形にまとめていただくことも良いですが、自分一人で書かずに家族や主治医の先生と十分に話し合うと良いでしょう。

 病気になった後も自分の人生をより良く過ごせるように、自分の人生において大切にしていることを改めて考え、周りの人と話し合ってみてはいかがでしょうか。