副院長 三上隆浩

 私の歯科医師人生は、母校の岡山大学の歯学部附属病院から始まりました。その後、家庭の事情(?)もあって島根大学附属病院に帰ってきました。当時、三刀屋町に住んでいたこともあり、関連医療機関として居住地から近い頓原歯科診療所に、“たまたま”派遣されましたが、病院関係者など多くの皆さんにお世話になり、今日につながっています。

 赴任当初の治療は、今より抜歯処置の頻度が高く、「口腔外科」から派遣されたとはいえ、「抜歯にいたる根本的状況を改善しなければならない」と考え、行政と協力した「歯科保健」にも関わるようになりました。そのころの頓原病院副院長は、自治医科大学2期生の山本従道先生。毎日(朝、昼休み、仕事終わり)、地域医療に対する熱い想いや実践等、多くの話を聞き、「歯科の立場からできる地域医療」の世界に関わる第一歩を踏み
出しました。

 頓原町時代の、「健康(まめ)なまちづくり推進協議会」には、当初、「歯科」は含まれていませんでした。理由を尋ねると「健康に関する会議だから、歯科は関係ないので」との返答。最近では、「口腔と全身の関係」について、多くの知見が得られてきていますが、歯科大学や大学歯学部を卒業する歯科医師は、医師とは違う課程で養成されることもあり、「口」と「体」は別のもの、あるいは関係ないと無意識のうちに考えている一般の方々がまだまだ多いのが現状です。

 今後は、一般的な歯科治療を基盤として、摂食嚥下リハビリテーションなど、関係する多職種の協働で成り立つ分野に積極的に参加し、歯科の立場から健康の維持増進を進め、地域全体がますます元気になればと思います。「口」という狭いところばかりを見るのではなく、お口から全身を、患者さんからご家族や地域のことも考える「木も見て森も見る」を目指したいと思います。