医長 松本賢治

 こんにちは、飯南病院の松本賢治です。ほくろで眼鏡の、あいつです。飯南病院での勤務も2年目になり、医療の面から皆さんに貢献したいと日々奮闘しています。

 そんな私は、長野県にある諏訪中央病院で医師としての人生をスタートさせました。まだ初々しい入社3カ月目、忘れられない患者さんがいました。心不全で入院したおばあちゃん。口うるさくて、スタッフからめんどくさがられるような方。確かに話は長く、訴えも多いので、時間をとって話を聞けるスタッフはいません。そこで私の出番。毎日3回顔を出し、時には1時間以上お話しをしました。それが私の務めだと思っていたのと、医師の世界では、「教科書よりも患者から学ぶことが多い」と言われるため。それを信じていたからです。

 そのうち、信頼なのか、愛情なのか、「私も先生みたいな人と結婚すればよかった」と言っていただけるまでに。ところが、おばあちゃん、状態が悪化して心不全で息が苦しくなり、薬を使って苦痛をとる治療をすることに。眠っている時間も多くなっていたある日。息絶え絶えに「私も先生みたいな人と結婚すればよかった」と。その後は、ほとんどしゃべることもできず、数日後に穏やかに旅立たれました。

 患者さんから学ぶことは実際に多くあり、病気のことだけでなく、人としても多くの気づきをもらえます。私はこのおばあちゃんから、どんなにつらくても医師を続けていこうと思える気持ちを教わりました。この患者さんとの出会いが、今も医師を続けられる理由だと思います。

 医療職は、給料を稼ぐためだけのものではなく、その人の人生と共にあるライフワークだと思います。これからも一人ひとりの患者さんとの関係を通して、人として、また医師として信頼されるように頑張りたいと思います。